今では在宅勤務やバーチャル会議が当たり前のことのようになっていますが、COVID-19のパンデミックにより、物流業界の企業の多くが想像だにしなかった速さでデジタル化とペーパレス化を進めなければならなくなりました。  

しかし、こうした加速化は、実は多くの業界大手企業が書類のデジタル化への移行を優先事項として、しばらく検討していたからできたのです。これらの企業は、効率的なサプライチェーンを運営するのに紙ベースの書類に依存していては非生産的であるだけでなく、長期的には問題が起こる原因となる可能性があると認識していました。 

その理由は 物流エコシステム全体で電子取引および電子化文書を交換することにより、 複雑な業務プロセスを一変することができるからです。電子交換は、輸送手段に関係なく、商品の輸送に関連する重要な業務情報を転送するための効率的、経済的、かつ安全な方法です。 

電子化文書の大きなメリット 

物流業務の電子データ交換により、オーダーや請求書など日々のトランザクションだけでなく、出荷貨物のライフサイクルのすべての段階において、ビジネスパートナー(バイヤー、サプライヤー、3PL倉庫、フォワーダー等)との業務上のやり取りを確実に遂行することができます。  

「物流企業は常に迅速さを優先してきました」WiseTech Globalのビジネスデベロップメント・エグゼクティブであるAurelie Zengerlin氏は語り 、「AWB(航空貨物運送状)や船荷証券(B/L)をはじめ、マニフェスト、貨物積荷明細、発注書、請求書などその他の書類にいたるまで、数々のドキュメントに即座にアクセスできる必要があるのです」と言っています。 

Zengerlin氏によると、サプライチェーンのペーパーレス化に抵抗していた物流企業の多くはロックダウンに直面した際に、業務スピードが大幅に遅くなることを目の当たりにし、オフィスにおける紙ベースの書類や記録の使用はもはや然るべき選択肢ではないことを認識しました。 

「多くの物流大手企業が本当にそうだと納得したのです」と同氏は言います。「ロックダウンの規模を誰も想像できなかったと思います。そして、この種の混乱に直面しては、紙ベースの手作業による処理にばかり過度に依存しているだけでは済まされなくなったのです」。 

WiseTech Globalの国際物流製品ポートフォリオ・マネージャー(International Logistics Product Portfolio Manager)であるAngela Gadaev氏も同感で、パンデミックに見舞われた際には、既により自動化されペーパーレス化されたプロセスを導入し始めていた企業が優位に立ったと述べています。 

「当社では、物流プロバイダーは信じられないほど大量かつ全く異なるデジタル化されていないデータを管理する必要があり、これらの紙書類の処理にはコストと時間がかかることを知っています」とGadaev氏は語ります。 

「書類の電子化に移行することで、手作業による書類の管理、ファイリング、検索、更新、そして共有に費やす時間を大幅に減らすことができ、同時にコストも削減することができます。会社、支店または部門に基づいた柔軟な表示制御により、御社のすべての情報が安全な場所に保管されるため、許可された人またはチームのみが特定のファイルにアクセスできます」。 

フレイト・フォワーダーは書類の電子化に依然として消極的 

では、物流業界や一部のフレイト・フォワーダーが書類の電子化導入に関して他の業界に後れを取っている理由は何でしょうか? 

運送業者や物流業界の企業の間で広範な導入を遅らせている原因の1つは、電子化文書に規格がないことに関連した懸念があることです。 

「書類の電子化には、今のところ限られた共通規格しかありません。したがって、輸送手段や原産国または仕向地によっては、貨物に関連する1つまたはすべての記録に紙ベースの書類が必要となる場合があります」とGadaev氏は言います。

「貨物の輸送手段が航空の場合、迅速さの必要性から何年も前に確立された航空貨物プロセスのデジタル化に関する高度な基準が存在します。しかし、これらの成熟したプロセスでさえ、業界が成長し、規制コンプライスのニーズが高まるにつれて進化し続けます」。 

言うまでもなく、書類の電子化導入を遅らせる可能性のあるもう1つの要因は、企業組織内部における抵抗です。 

WiseTech GlobalのAirline Connectivity(航空会社接続担当)部長であるScott  McCorquodale氏によると、従来のやり方から脱却し、社内の方式の変更や、書類の作成、転送、保存のためのテクノロジーへの投資を伴う新しいツールを導入するよう企業を説得するのは難しい場合があります。しかしながら、それさえ克服できれば、その企業を前進させることができます。 

「簡単に言うと、企業が新しいツールを導入したがらないのは、新しいことに対して不安があり半信半疑である場合が多いと考えることができます」とMcCorquodale氏は語ります。「抜本的な革命よりも安全で着実な進化が望ましいとされてきましたが、今では物流大手企業の多くが 『変化に抵抗することが、デジタル化の成功にとって最大の障害である。我われ全員が考え方を変える時が来たのだ』と感じているのです」。 

加速する書類の電子化  

とはいえ、少なくとも世界のより発展した重要な分野の一部では、書類の電子化がゆっくりと進んでいます。 

国際航空運送協会(IATA)は2020年に、電子エアウェイビル(eAWB) への切り替えを2022年末までに100%にするという業界目標を発表しました。このIATAによる取り組みも貨物業界のデジタル化に拍車をかけています。例えば、ルフトハンザ・カーゴ(Lufthansa Cargo)社は2022年2月、同社がIATAの取り組みに従い、2022年3月27日から開始する夏期スケジュールから運用可能なすべてのレーンでeAWBへの切り替えを行うことを発表しました。 

さらに2024年8月には、欧州連合の 電子貨物輸送情報(eFTI)  が施行予定です。当規制により、当局が電子形式の貨物輸送情報を有効な形式として受け入れるための法的枠組みが提供され、書類を印刷する必要がなくなることが期待されています。 

「誰もがすべての書類を電子化したいと考えていると思います。ありがたいことに、非常に進歩的な航空会社がいくつかあり、業界の大きな方向性を定めることに取り組んでいます」とMcCorquodale氏は言います。 

「したがって、我われは今、貨物業務プロセスのデジタル化をさらに推進する時に来ている可能性があります。そしてCargoWiseがその重要な役割を果たすのです。なぜなら、例えば同プラットフォームから作成される航空貨物のすべての出荷情報は電子化されているからです。その結果、フォワーダーが意識的に送信しないことを選択しない限り、常にデフォルトでデータが送信されるようになっています」。

 

よりペーパーレスで生産的な環境を目指して

Zengerlin氏によると、生産性の低下とは、従業員の何がうまくいっていないのかということだけではなく、従業員が紙ベースのプロセスやデータの転送作業で身動きが取れなくなるのではなく、彼らを必要な分野に移動させれば、はるかに効率的に業務を遂行できるということも意味しています。そして、そうした手作業の大半は自動化できるというのです。 

「物流はプロセス重視の業界です。毎日、程度の差こそあれ、手作業や専門家の助言を取り入れて何回も同じ作業が繰り返されています」と同氏は言います。「物理的な事務処理に依存する、つまり、たくさんの人手を要する、繰り返されてエラーが発生しやすい作業を排除することが常に最善の選択肢です。そしてそのような作業を自動化・加速化することで、御社には直ぐに大きなメリットがもたらされます」。 

Gadaev氏は、これはEDI(電子データ交換)とさらなるペーパーレス化の推進から得られる最大の成果の1つだと考えます。 

「どういうことが起きるかというと、スタッフは時間のかかる繰り返しの業務から解放され、顧客サービスの向上とスキルセットの拡大に​​もっと集中できるようになります。 紙切れを探したり、データを入力する能力ではなく、蓄積したビジネスに関する知識と顧客の理解を活用する時間が生まれます」と同氏は結論付けています。  


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